「自衛隊には安く住める官舎があるって聞くけど、本当に安いの?」
――結論から言うと、住居費を大きく抑えやすいのは事実です。
ただし気をつけるべき点がいくつかあります。
FP2級元自衛官ノフクです。
この記事では、国家公務員宿舎(通称:官舎)のメリット・デメリットのリアルと、住居費の安さを確実に資産形成へ変えるコツをお伝えします。
(基準時点:2026年10月時点の制度)
この記事は、「副業できない人の資産形成の3つの柱」の柱①『家計を整える』にあたる記事です。
官舎のメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 使用料が民間賃貸より安い傾向(金額は地域・物件・階級で大きく異なる) | 築年数が古い物件も多く、設備は期待しすぎない方がいい |
| 職場に近く、緊急招集にも対応しやすい | 基本的に転勤のたびに住み替えになる |
| 同じ環境の家庭が多く、事情を分かり合える | ご近所も自衛官。距離感に気を使う |
住居費は人生で最大級の固定費です。
「固定費の見直し」でも書いたとおり、住居費を抑えられたら家計への効果はかなり大きいです。
官舎の利用はその大きな固定費を下げられる選択肢です。

月3万円の家賃の差は、年間36万円。10年なら、元本だけで360万円。
官舎の「割安な使用料」が、積み重なると資産の差として大きくなっていきます。
官舎は民間の賃貸と何が違うのか
官舎は国が貸してくれる住まいなので、民間のアパートやマンションとは仕組みがいくつも違います。
ルールを決めているのは国家公務員宿舎法で、この記事に出てくる条文番号はすべてこの法律のものです。
まず、使用料は大家さんとの交渉で決まりません。
国家公務員宿舎法で、建設費の償却額・修繕費・地代・火災保険料をもとに算定すると決められていて(第15条)、支払いは給与からの天引きです(同条第3項)。
値上げ交渉も値下げ交渉もない代わりに、こちらの都合で条件を変えることもできません。
次に、経年劣化や天災による傷みの修繕費は国が負担します(第17条第2項)。
ただし軽微なものは対象外で、自分の責任で壊したり汚したりした分は、元に戻すか損害を賠償することになります(第16条第3項)。
なお、故意や重大な過失によらない火災による損傷は、この賠償の対象から外れます(同項ただし書き)。
そして、勝手に手を入れることはできません。
維持管理機関の承認を受けないで改造や模様替えなどの工事をしてはならない、と決められています(第16条第2項)。
人に貸したり、住む以外の用途に使ったりすることも同じく禁止です。
窓口も違います。
私が現役の時は、申込みも入退去の手続きも駐屯地の担当部署(業務隊など)でした。
不動産会社を通さないので仲介手数料はかかりませんが、申込順ではなく階級や家族構成で部屋が決められるなど民間の賃貸契約とは違うところが多くありました。
無料で貸与される「無料宿舎」もあります
宿舎は、公邸・無料宿舎・有料宿舎の3種類に分かれています(国家公務員宿舎法 第3条)。
自衛官が住むのは基本的に有料宿舎ですが、職務の内容によっては無料で貸与される「無料宿舎」という制度があります。
無料宿舎の対象は法律で決まっていて(第12条)、自衛官に関係してくる条件は次の3つがあります。
- 勤務時間外の非常勤務などのため、勤務する官署の構内か、その近くに住まなければならない人
- へき地にある官署や、特に隔離された官署に勤務する人
- 官署の管理責任者で、職務のため構内か、その近くに住まなければならない人
ここで知っておきたいのは、条文に「無料宿舎は、職員の職務に対する給与の一部として貸与される」と書かれていることです(第12条第2項)。
役職に付いてくるおまけではなく、職務上そこに住む必要があるから貸される、という位置づけです。
希望して選べるものではないので、自分が対象になるかどうかは所属の担当部署で確認することになります。
築年数は古い建物が多い
官舎は「安いけれど古い」と言われます。数字でも、そのとおりの傾向が出ています。
防衛省の資料によると、全国にある自衛隊施設23,254棟のうち、約4割にあたる9,875棟が旧耐震基準で建てられたものです。
旧耐震基準とは、1981年(昭和56年)の建築基準法の改正より前の基準のことです。
内訳は、旧軍の時代から1945年までの建物が589棟、1946年から1982年までの建物が9,286棟です。
いっぽうで、1983年以降に建てられた建物も約13,400棟あります(防衛省「自衛隊施設の予防保全への転換」2023年度の資料より)。
私が勤務していた駐屯地の官舎は、半数近くが1965〜1974年(昭和40年代)に建てられたものでした。
ただし、これは宿舎だけの数字ではなく、隊舎や庁舎を含む自衛隊施設全体の数字です。
「官舎の約4割が旧耐震基準」とは言えません。
また、建替えや改修の予算は近年増えていて、新しい官舎も順次できています。
実際の築年数や設備は地区によって差が大きいので、入居を考えている官舎のことは駐屯地の業務隊などに事前に確認しておきましょう。
転勤したら、原則として引っ越すことになります
官舎は「勤務地に応じて貸してもらえる住まい」なので、転勤するとそのまま住み続けることはできません。
法律では、転任や配置換えなどで宿舎に住む資格を失ったときは、その日から20日以内に明け渡さなければならないと決められています(第18条第1項第3号)。
相当の事由があれば承認を受けて延長できますが、それも有料宿舎で最長6か月、無料宿舎は2か月までです。
延長の承認を受けられても有料宿舎で最長6か月です。
「子どもの学校の区切りまで家族だけ残る」という形を、何年も続けることはできません。
「浮いた家賃」を資産に変える2つのコツ
①差額をそのまま自動積立に回す
民間で借りた場合との差額を計算して、その金額を先取り積立貯金または積立投資に設定します。
「安い家に住んでいる」だけでは1円も貯まりません。
差額を積立に変えて、初めて官舎の安さが資産になります。
②転勤・退去の費用を積み立てておく
転勤族の宿命として、転勤のたびに引っ越し・退去・新生活の出費が発生します。
転居に掛かる引っ越し代などは支給されますが、支給されない部分もあります。
支給されるお金が入金されるのが、引っ越しの1か月後になることもあります。
月数千円でも「引っ越し費用」を分けて準備しておくと、そのたびに貯金や投資を崩さずに済みます。

「官舎は安いから貯まるはず」なのに貯まらない家庭の共通点は、安くなった分のお金の行き先を決めていないことです…。
先取りする仕組みを作ると貯めやすくなります。
まとめ
- 官舎は最大級の固定費「住居費」を大きく抑えられる可能性がある
- ただし使用料や築年数は、物件や勤務地によって差が大きい
- 浮いた分は「差額を自動積立」にして初めて資産になる
- 転勤のたびに出費があるので、引っ越し用のお金は分けて準備しておく
これから結婚して官舎に住むという人は、結婚で変わるお金の話もあわせて読んでみてください。

営内・官舎と続く「住居費の安さ」を活かす全体像は、こちらにまとめています。

私が貯金ゼロから1,000万円を作った道のりは、プロフィールにも書いています。


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