「公務員や大企業の会社員は、医療保険に入らなくていい」と聞いたことはありませんか。
――結論から言うと、一律に「入らなくていい」とは言えません。
ただ、公務員が入る共済組合の多くと、会社員が入る健康保険組合の一部には、医療費の自己負担が月2万5千円前後で頭打ちになる「付加給付」という仕組みがあります。
付加給付がある人は、医療保険の必要性が下がる場合があります。
FP2級元自衛官ノフクです。
私自身、この仕組みを知らずに不要な医療保険に入り、保険料を余計に払っていた時期がありました。
この記事では、付加給付とは何か・自分の保険にあるかどうかの調べ方・そのうえで医療保険をどう考えるかを、2026年8月の制度改定後の数字でお伝えします。(基準時点:2026年9月時点)
この記事は、「副業できない人の資産形成の3つの柱」の柱①『家計を整える』にあたる記事です。
付加給付とは:高額療養費に上乗せされる払い戻し
医療費が高額になったときは、公務員も会社員も自営業の人も「高額療養費制度」で、1か月の自己負担に上限がかかります。
ただ、その上限は住民税非課税の人を除くと月6万円〜27万円ほどで、年収約370万〜770万円の人だと月9万円前後になります。
| 年収の目安 | 1か月の上限 | 1年の上限 |
|---|---|---|
| 約1,160万円〜 | 270,300円+α | 168万円 |
| 約770万〜1,160万円 | 179,100円+α | 111万円 |
| 約370万〜770万円 | 85,800円+α | 53万円 |
| 〜約370万円 | 61,500円 | 53万円 |
| 住民税非課税 | 36,900円 | 29万円 |
付加給付は、この高額療養費制度を使っても残る自己負担を、加入している組合がさらに払い戻してくれる制度です。
呼び名は組合によって違い、共済組合では「一部負担金払戻金」(家族は「家族療養費附加金」)、健康保険組合では「一部負担還元金」(家族は「家族療養費付加金」)と呼ばれることが多いです。
付加給付がある保険・ない保険
| 医療保険の種類 | 主に入っている人 | 付加給付 |
|---|---|---|
| 共済組合 | 公務員 | 多くの組合にある |
| 健康保険組合 | 大企業などの会社員 | 組合ごとに違う(ない組合もある) |
| 協会けんぽ | 中小企業などの会社員 | ない |
| 国民健康保険(市区町村) | 自営業・退職後の人など | ない |
付加給付は、法律で決まった給付に組合が上乗せする独自の給付です。
健康保険法第53条では、健康保険組合が規約で定めた場合に行えることになっており、協会けんぽにはありません。
つまり、勤め先の健康保険制度次第で医療費の備え方が変わるということです。
基準額は「月2万5千円前後」
多くの組合では、1か月・1つの医療機関ごと(入院と外来は別)の自己負担が一定の額を超えると、超えた分が払い戻されます(複数の医療機関の分を合算する場合など、計算方法は組合によって違います)。
この「基準額」は2万5千円の組合が多いですが、2026年8月の高額療養費の改定にあわせて見直した組合もあります。
| 組合(例) | 基準額 |
|---|---|
| 公立学校共済組合 | 25,000円 |
| 警察共済組合 | 25,000円 |
| 防衛省共済組合 | 27,000円(2026年8月診療分から) |
| 厚生労働省第二共済組合 | 27,000円 |
| NTT健康保険組合 | 25,000円 |
| 日本製鉄健康保険組合 | 25,000円 |

自衛官が入る防衛省共済組合は、2026年8月診療分から2万7千円に変わりました。
昔の金額で覚えている人は、一度確認しておきましょう。
入院で医療費100万円かかったときの計算例
年収約500万円の人(高額療養費の上限は85,800円+α)が、入院で1か月に医療費100万円(窓口3割なら30万円)かかった場合です。
| 付加給付なし (協会けんぽなど) | 付加給付あり (基準額2万5千円) | |
|---|---|---|
| 高額療養費を使った後の自己負担 | 92,940円 | 92,940円 |
| 付加給付の払い戻し | なし | 67,900円 |
| 最終的な自己負担 | 92,940円 | 25,040円 |
同じ入院でも、付加給付があるかどうかで1か月の負担が約6万8千円違います。
入院が何か月も続けば、差は積み重なります。

この例で言うと、入院して9万円以上払っても、あとで6万円以上戻ってきます。
知らないと「高額療養費制度を使っても自己負担が9万円もあるなら、医療保険に入っておかないと」と思ってしまうんですよね。
自分の保険の付加給付を調べる3ステップ
付加給付は組合ごとに金額が違い、実施していない健康保険組合もあります。
「2万5千円」はあくまで目安なので、必ず自分の組合で確認してください。
ステップ1:加入している保険の名前を確認する
資格確認書や「資格情報のお知らせ」、マイナポータルで加入している保険の名前を確認します。
- 公務員:「◯◯共済組合」。国家公務員なら省庁ごとの共済組合、市町村職員なら「◯◯県市町村職員共済組合」、都道府県職員なら「地方職員共済組合」、教職員なら「公立学校共済組合」など
- 会社員:「◯◯健康保険組合」なら付加給付がある可能性があります。「全国健康保険協会(協会けんぽ)」なら付加給付はありません
ステップ2:組合のサイトで検索する
検索するときは、次の言葉を組み合わせると確実です。
- 共済組合:「(組合名) 一部負担金払戻金」
- 健康保険組合:「(組合名) 一部負担還元金」または「(組合名) 付加給付」
「医療費が高額になったとき」「短期給付」「健保の給付」といったページに載っていることが多いです。
ステップ3:金額・手続き・対象外を確認する
- 基準額:自己負担がいくらを超えたら戻るか
- 手続き:多くは申請不要で、受診から3か月後くらいに振り込まれます。ただし、防衛省共済組合のように、案内が届いてから請求が必要な組合もあります
- 対象外:差額ベッド代、入院中の食事代、先進医療は付加給付の対象になりません
医療保険はどう考えるか
付加給付があれば、入院しても医療費そのものの負担は月2万5千円前後となり、かなり手厚く守られています。
ただ、医療保険が備えようとしているのは医療費だけではありません。入院中の雑費や、働けない間の収入減も含まれます。
以下のお金は付加給付の対象外となります。
- 差額ベッド代:個室を希望した場合の費用
- 食事代、日用品代:入院中の生活費
- 先進医療:全額自己負担になる治療
- 働けない期間の収入減:傷病手当金などの制度がある(下の「医療費と収入減は分けて考える」で説明)
なので、保険で備えるとしたら、この「対象外の部分」です。
とはいえ、差額ベッド代は自分から個室を希望して同意書にサインしなければ原則かかりませんし、食事代や日用品代は入院しなくても発生します。
また先進医療は、公的医療保険が使える標準治療だけを受けるなら関係ありません。
先進医療を選んだ場合、技術料は全額自己負担です。
先進医療を選んだ患者1人あたりの平均は約6万円ですが、陽子線治療や重粒子線治療のように数百万円かかるものもあります(厚生労働省「令和7年度 先進医療の実績報告」)。
医療費と収入減は分けて考える
入院や病気で家計が本当に苦しくなるのは、医療費よりも働けない間の収入減であることが少なくありません。
収入減をカバーする制度には、次のようなものがあります。
- 会社員(協会けんぽ・健康保険組合):傷病手当金。仕事を休んで給与が出ないとき、4日目から、おおむね給与(標準報酬月額の平均)の3分の2が、通算1年6か月まで出ます
- 公務員:まず病気休暇の間は給与が出ます(国家公務員は原則連続90日まで)。給与が出ない期間には、共済組合の傷病手当金(標準報酬日額の3分の2・通算1年6か月)があります
そのうえで、医療保険が必要か考えるために見るべき順番は次のとおりです。
- 公的医療保険の高額療養費
- 加入している組合の付加給付
- 傷病手当金・病気休暇などの収入の保障
- 自分の貯蓄(生活防衛資金)
- それでも足りない部分を、民間の医療保険や所得補償保険で補う
「医療保険に入るかどうか」から考えるのではなく、「病気になったとき、自分はいくら困るのか」から逆算するのが、保険料を払いすぎないコツです。
付加給付がない協会けんぽや国民健康保険の人は、年収約370万〜770万円なら1か月の自己負担上限が9万円前後です。
まずは公的な保障・勤め先の保障・貯蓄(生活防衛資金)でどこまで対応できるかを確認し、それでも足りない大きな出費を保険で補うと考えるといいでしょう。
生活防衛資金についてはこちらの記事でまとめています。

注意点
- 組合によって金額が違う。基準額は2万5千円ではなく2万7千円の組合もあり、標準報酬月額が高い人は基準額が高くなる組合もあります
- 制度は改定される場合がある。最近でも、2026年8月の高額療養費の改定にあわせて基準額を見直した組合があります
- 転職・退職で変わる。退職後に任意継続(最長2年)を選べば、在職中とほぼ同じ給付が続く組合も多いですが、国民健康保険や協会けんぽの会社に移ると付加給付はなくなります
まとめ
- 付加給付は、高額療養費のあとに残る自己負担を、組合がさらに払い戻してくれる制度
- 公務員の共済組合の多く、会社員の健康保険組合の一部にある。協会けんぽ・国民健康保険にはない
- 基準額は月2万5千円前後(2026年8月から2万7千円の組合もある)
- 調べ方は「(組合名) 一部負担金払戻金」または「一部負担還元金」で検索
- 保険を考えるときは「医療費」と「収入減」を分け、公的な保障と貯蓄で足りない部分だけを保険で補う
実際に保険を見直す手順は「自衛官は保険に入りすぎ?団体保険を土台にした見直し3ステップ」で解説しています。
上の記事は自衛官向けに書いていますが、共済・団体保険を土台にする考え方は、他の公務員や勤め先に団体保険がある会社員にも当てはまりますので、参考にしてみてください。
私が貯金ゼロから1,000万円を作った道のりは、プロフィールにも書いています。

