「自衛官の定年は早いと聞くけど、実際は何歳?退職金はどうなる?」
――結論から言うと、多くの自衛官は50代半ばで定年を迎えます。そして退職してからもらえるお金は「退職手当」と「若年定年退職者給付金」(以下、若年給付金)の2本立てとなっています。
FP2級元自衛官ノフクです。
この記事では、若年定年制の全体像と退職金の目安、若年給付金の計算・税金・使い道、そして現役のうちにやっておくべき備えをお伝えします。
この記事は、「副業できない人の資産形成の3つの柱」のうち、柱①『家計を整える』にあたる記事です。
結論:自衛官の退職後のお金は「退職手当+若年給付金」の2本立て
| もらえるお金 | 内容 |
|---|---|
| 退職手当 | 一般の公務員と同じ退職金 |
| 若年給付金 | 定年が早いことを補う自衛官だけの給付 |
それぞれの計算方法は次のとおりです。
退職手当は、最大で(退職時の俸給月額)× 約47月分 +(在職期間中の階級に応じた調整額)で計算されます。
防衛省の公表例では、1尉で約2,300万円、曹長で約2,000万円です。
退職手当の計算の仕組みは、一般の公務員と同じです。
国家公務員の退職金についてはこちらにまとめています。

若年給付金は、前期分と後期分として数回に分けて支給されます。
金額は(退職時の俸給月額)×(算定基礎期間の年数)×(支給係数)で計算されます。
(基準時点:2026年度時点の制度に基づく。退職手当の金額例は防衛省「自衛官の人事・給与制度の概要」より)
なぜ定年が早いのか:若年定年制の仕組み
自衛隊は「精強性」を保つため、自衛隊法で一般の公務員より早い定年が定められています。
多くの階級で50代半ば、一般企業や他の公務員より数年〜10年ほど早く現役が終わります。
| 階級 | 定年年齢 |
|---|---|
| 1佐 | 58歳 |
| 2佐・3佐 | 57歳 |
| 1尉・2尉・3尉・准尉・曹長・1曹 | 56歳 |
| 2曹・3曹 | 55歳 |
2023年10月(1尉〜1曹)と2024年10月(1佐〜3佐、2曹・3曹)の2回に分けて、それぞれ1歳ずつ引き上げられました(防衛省「自衛官の定年年齢の引上げについて」)。
なお、定年年齢については、今後も段階的に引上げが実施される予定です(防衛省「自衛官の処遇・勤務環境の改善及び新たな生涯設計の確立に関する基本方針」)。
定年が早い分の「収入の穴」を埋めるために作られたのが、若年定年退職者給付金(若年給付金)という制度です。

自衛官は「定年が早いから損」というわけではなく、「早い分を給付金で補う」制度がちゃんとあります。
ですが、私の周りには若年給付金や退職金がどれくらいもらえるか知らない自衛官がたくさんいました。
仕組みを知らないと、定年後の備えとしていくら必要かわかりませんよね。
制度を正しく理解して自分のライフプランを考えていきましょう。
私が貯金を始めたきっかけも「先輩隊員のお金の話」でした
現役時代、定年間近の先輩隊員から家計や退職後のお金の話を聞いて、「このままでは老後に生活できなくなるかもしれない」と危機感を覚えたのが、私がライフプランについて考え始めた原点です。
退職金があるとはいえ50代半ばから年金までの期間は長く、再就職の収入は現役時代より下がるのが普通です。
「退職してから貰えるお金を知ること」は、自衛官のライフプランを考えるうえで重要なポイントです。
定年から年金が始まるまでの約10年間、収入がどう変化していくかはこちらにまとめています。

若年給付金はいくら?計算の仕組み
計算式は「退職時の俸給月額 × 算定基礎期間の年数 × 支給係数」です。
「算定基礎期間」は、前期は「自衛官としての定年から60歳まで」、後期は「60歳から自衛官以外の国家公務員の定年まで」となります。
「支給係数」については、下の表にあるように段階的に引き上げられているところです。
| 退職時期 | 前期(定年〜60歳) 1年につき | 後期(60歳〜) 1年につき |
|---|---|---|
| 2026年3月31日まで | 6か月分 | 3.45か月分 |
| 2026年4月1日〜2027年3月31日 | 7か月分 | 3.83か月分 |
| 2027年4月1日〜2028年3月31日 | 8か月分 | 4.21か月分 |
| 2028年4月1日から | 9か月分 | 4.6か月分 |
つまり、いつ退職するかで給付金額が変わるということです。
たとえば定年56歳の人が2026年度に退職した場合、前期は4年分で俸給月額の28か月分。
後期は60歳から他の国家公務員の定年である62歳までの2年分で7.66か月分となります。
なお、他の国家公務員の定年は65歳までの引上げが決まっているので、後期の算定基礎期間は変わっていきます。
ここで気をつけたい点が2つあります。
ひとつは、上位の階級の人は計算のもとになる俸給月額に上限があること(俸給月額は3佐の最高号俸までで頭打ち)。
もうひとつは、算定される年数に応じたわずかな調整率が掛かることです。(定年から60歳までの年数が長い人で数%下がる程度)
自衛官以外の国家公務員の定年引上げについては、こちらの記事に書いています。

支給は「4回に分けて」やってくる
若年給付金は一括ではありません。定年が60歳より前の自衛官は、合計4回に分けて支給されます。
| 期 | 回 | その期の支給割合 | 支給時期 |
|---|---|---|---|
| 前期 | 1回目 | 約30% | 退職後最初に来る4月または10月 |
| 2回目 | 約70% | 退職した年の翌々年の8月 | |
| 後期 | 3回目 | 40% | 60歳の誕生日の後、最初に来る4月または10月 |
| 4回目 | 60% | 62歳を迎える年の8月 |
ここは現役の自衛官も知らない人が多いところです。
退職して2回受け取ったら終わり、ではありません。60歳を過ぎてから後期給付としてもう2回あります。
なお、2028年4月1日以後に退職する人からは、支給の回数と計算方法、そして再就職の収入による減額の基準がさらに改められることが、同じ法律ですでに決まっています。
「支給時期はいつか、支給割合はどれくらいか」を知らないと、「思っていたより少なくて支払いができない」や「これだけ貰えるなら、もっと使ってもよかったのに」といったことにつながります。
意外と知らない:若年給付金には税金がかかる
「給付金だから非課税でしょ?」と思っている人が多いのですが、違います。
1回目は退職手当と合算して退職所得として課税され、2回目以降は一時所得として扱われます。
額面そのままを生活設計に入れていると、税金が引かれる分との差でライフプランにズレが生まれます。
(防衛省「若年定年退職者給付金の課税上の取扱いについて」令和5年4月1日 別紙第2)

「非課税だと思ってた」は退職者あるあるです…。
額面ではなく手取りベースで計画を立てましょう。
FP視点:若年給付金の使い道・3つの順番
①まず生活防衛資金と特別費を確保する
生活防衛資金と当面の特別費(車・家電の買い替え費用や旅行資金など)を最優先で確保します。
なぜかというと、再就職できても自衛官時代より収入が下がる場合が多いからです。
収入が下がったのに退職前と同じ生活をしていたら、お金が足りなくなるのは当たり前ですよね。
それでも困らないように、使えるお金を用意しておく必要があるのです。
生活防衛資金の目安と考え方は「生活防衛資金はいくら必要?」で解説しています。
②ローンの一括返済は急がない
退職金でローンを完済したくなる気持ちは分かりますが、手元の現金が薄くなるのは危険です。
金利と手元資金のバランスを見てから判断しても遅くありません。
十分に手元資金が確保できるなら、ローンを完済してしまいましょう。
その時は金利の高いローンを優先して返済するのがポイントです。
③残りは投資・貯蓄もしくは「豊かに使う」
残りは自分の資産状況とライフプラン表を確認してから、投資・貯蓄もしくは自分や大切な人のために使いましょう。
ここで「資産形成の3つの柱」で最後に触れていた「豊かに使う」という考え方が出てきます。
「まとまったお金があるのに投資しないなんてもったいない」という意見もありますが、ライフプラン表を基に資産形成して定年後の資金が準備できていたら、リスクを取って資産を増やしていかなくてもいいですよね。
年を取って動けなくなった時に一番お金持ちになっていても、満足にお金の価値を引き出すことはできません。
お金の価値を引き出せるうちに使うのも、とても大切なことです。

私はお金は人生を豊かにするための道具だと考えています。
ブログを読んでくださった人がお金で困らなくて済むようになることが、私の目標です。
現役自衛官だと制限が多かったので、退職してFPとして自衛官やお金で悩む人たちのお手伝いをさせていただく道を選びました。
ライフプラン表の作り方についてはこちらの記事を読んでみてください。

現役のうちにやっておく備え
①自分の「もらえる額」をざっくり把握する
階級と勤続年数でもらえる金額が大きく変わります。
部隊の人事担当者なら試算することができると思うので、一度頼んで試算してもらいましょう。
自分が退職する時にいくらもらえるかざっくりでも把握しておくと、将来への備えがどれくらい必要か考える材料になります。
任期制から「曹」になった人は、任期満了金を受け取った期間が退職手当の勤続年数に入りません。
任期満了金の仕組みはこちらで解説しています。

②「貯めやすい現役時代」に仕組みを作る
自衛官の貯めやすさは営内生活の間がピークですが、営外に出てからも資産形成は十分できます。
「自衛官はお金が貯まる?」の記事で書いたとおり、先取り貯金と長期投資の仕組みを現役のうちに作っておくことが、定年後への一番の備えになります。

「退職手当だけじゃなく若年給付金ももらえるから、貯めておかなくても大丈夫」と給料を使い切ってしまう先輩もいました…。
若年給付金は、早く定年を迎える自衛官の退職後の収入を補うための制度です。
現役の時に備えておかないと、あとで大変な思いをすることになります。
給付水準は引上げの途中です
2025年12月、防衛人事審議会の処遇・給与部会が「若年定年退職者給付金の給付水準の引上げ等に関する最終提言」をまとめました。
その内容は2026年7月3日公布の法改正(令和8年法律第53号)で実現し、2026年4月1日以後に退職した人から適用されています。
改正の前と後で条文を読み比べて、確認できた変更は次の2つです。
- 給付水準の引上げ。前期は1年につき6か月分から9か月分へ、後期は3.45か月分から4.6か月分へ。ただし、いきなりではなく3年かけて段階的に(前の表のとおり)
- 支給の対象が「引き続いた在職期間20年以上」から「通算して20年以上」へ。
再任用者(一度退職して再入隊した人)も支給対象になれる可能性が増えました。
段階を踏むのは、施行の前後で退職した人の間に大きな差が出ないようにするためです。
つまり同じ階級・同じ俸給でも、退職する年度が1年違えば受け取る額が変わります。
引上げ前の「6か月分」「3.45か月分」は、防衛人事審議会の資料(2025年5月)に載っていた数字です。
少し前に書かれた記事や資料には、この古い数字が残っていることがあります。調べるときは、その資料の日付を見てください。
まとめ
- 自衛官の多くは50代半ばで定年。「退職手当+若年給付金」の2本立て
- 若年給付金は合計4回に分けて支給される。1年あたりの月数は引上げの途中で、退職した年度で決まる
- 非課税ではない。1回目は退職所得、2回目以降は一時所得。再就職後の収入によっては減ることもある
- 使い道は「生活防衛資金 → ローン返済は慌てない → 残りは分けて育てる、状況によっては使う」の順番
- 貯めやすい現役時代に貯金と投資の仕組みを作っておくことが一番の備え
資産形成の全体像は「副業できない人の資産形成の3つの柱」にまとめています。
私が貯金ゼロから1,000万円を作った道のりは、プロフィールにも書いています。

